読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

捨てるもの残すもの

物欲のない僕がミニマリストになる!2017年「物を持たない生活」を目指します。いろいろ捨てちゃうけど、大切なものは残していきます。そんな生活の記録です。ミニマリストを目指していますが、捨てるばかりが目的ではありません。捨てながら残しながら、何が自分に大切かを考えてみたりして。

『夏の裁断』島本理生

100冊読書
 
[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]
夏の裁断 [ 島本理生 ]
価格:1188円(税込、送料無料) (2017/1/24時点)

 

本を裁断することを「自炊」なんて言う。
 
 
読書好きにとって、この本の裁断「自炊」は心が痛い。
 
 
作家にとっては読み手以上に切ないものだろう。
 
 
1万冊以上ある死んだ祖父の本を裁断しながら、作家の千紘は男たちのことを考える。
 
 
幼い時に受けた性的体験から、奴隷制の愛情しか持てなくなっている千紘。
 
 
猪俣くんの、純粋で素直な愛情に物足りなさと不安感を持ってしまう千紘。
 
 
柴田は千紘に擦り寄ってくる。千紘が好きだと絡みついてくる。しかし千紘が寄り添っていくと逃げていく柴田。逃げられてしまったのは自分に原因があると罪悪感に悩まされる千紘。
 
 
本の自炊に罪悪感を持っていたはずなのに、いつのまにかそんな感情もなくなっていた。
 
 
奴隷制の愛情から抜け出していく千紘。本の裁断とともに奇形の愛情からも脱していく。
 
 
 
読みながらこの本は著者島本理生の断筆宣言なのではないかと思っていた。
 
 
本をいくら書いても隣人一人も変えることができない。一万冊以上の蔵書を持つ死んだ祖父も何も教えてはくれなかった。
 
 
祖父の蔵書を自炊することに嫌悪感を持っていた千紘も、いつしか自分から自炊するようになり、あまりの多さに挫折して祖父の家とともに蔵書も売られていってしまう。
 
本なんていつかは形をなくすものだし、いつかまた記憶からも消えていく。
 
 
断筆宣言かと思いながら読み進めていたが、最後の一文に救われた思いだ。
 
 
「しかし本当の私は、この夏生まれたばかりらしい」
 
 
新たな島本理生の新しい始まりの書だったのかもしれない。
 
夏の裁断
  • 作者:島本 理生
  • 出版社:文藝春秋
  • 発売日: 2015-08-01